筋肉を成長させるにはそのメカニズムやトレーニング理論を学ぶことは必須であり、最短のアプローチです。今回は科学者でありプロボディビルダーのベン・パクルスキーさんの持論を解説してみます。
筋肥大に伸び悩んでいるあなたの参考になります。
筋肉のバルクアップ(筋肥大)を目指すなら理論も大事
バルクアップを目指してジムに通うのは我々トレーニーの宿命です。週に何回も来て、歯を食いしばりながら筋トレに励んでいても筋肉の量はなかなか増えません。
皆さんもそんな悩みをお持ちでしょう。私の40ワークアウト法はトレーニング時間は40分前後で、1セットのトレーニング時間は40秒以上で40歳以上の中高年の方の筋肥大を目指すトレーニング方法を目指しています。
63歳になる現在も試行錯誤中です。本当に筋トレにおける筋肥大は難しいものです。
今夜もいつもの様にジムで質問を受けました。『どうしたら中高年の私たちもあなたのように筋肉を大きく出来ますか?』という一般的な男性らしい質問です。
ビルダーでも無い私が言われるのです。嬉しい気持ちとこの程度でと言う恥ずかしい気持ち半分です。
若い方なら『多関節トレーニングのスクワットやベンチプレス、ベントオーバーロー、デッドリフトをやれば成果は必ずでます、継続して下さい!』と答えるのですが私と同世代50歳代はそういう訳にはいきません。
もちろん筋トレ経験者では無いので怪我をされては困ります。マシントレーニングも指導し、フリーウエイトも徐々に教えさせていただいています。
しかし、一番大事なのは筋肥大へのアプローチです。ここが一番難しいのです。遺伝的要素や過去の運動履歴も作用しますが、アプローチを間違わなければ成功します。
まずは軽く実践あるのみです。
そこで、疲労の残らないように短時間のワークアウト、どの種目も最後の1セットの動作時間をネガティブを効かせて12〜15レップほどで30秒〜40秒を目指してやってもらっています。(軽めの重量でもゆっくりとしたエキセントリック収縮はかなりきついようで皆、後日は筋肉痛がすごいらしいですが!)
常日頃から思うのですが、なぜ多くのジムメンバーが熱心に通っているのに筋肥大しないのか探ってみました。
ジムの周りを見渡すとほとんどの初級から中級トレーニーの方は高重量、低レップを1年中行っているか、なぜかいつも同じ重量で3セット10レップばかりの方も多いです。
そして、毎日変化の無いワークアウトです。2年、3年と見ていますが、全然変わり映えしていません。でもこれが現実です。バルクアップは色々な要素が必要で、年齢でもやり方が若干異なると僕は思います。
やはり、筋トレもただ行う事だけでなく、理論の勉強と検証が大事です。
今回は最近、僕が理論的にもはまっているIFBB PROのベン・パクルスキーさんのトレーニングの10のルールを2014年1月のMUSCLE & FITNESSより紹介させていただきます。かなり参考になるTIPSです。
筋肉の成長が停滞していると思われるあなたも、これから始めようとしているあなたも参考になります。
科学と実践を究めたベン・パクルスキーの筋肥大に効果の高いトレーニング10のルール
科学者(キネオロジーの学位)でありながら、IBFF PROのパクルスキーほど徹底して、科学の知識をワークアウトに活用している選手はいません。さあ、10のルールの開始です。
- 筋肉のテンションを最大限に維持する。
- オーバートレーニングを過大視しない。
- ワークアウト時間を短くして1日をダブルで鍛える。
- 『オーバーリーチング』を活用する。
- 速筋線維と遅筋線維のためにテンポを変える。
- ユニークなエクスサイズも利用する。
- トレーニングをサイクル化する。
- ウエスト周りを細く保つために。
- 重力による負荷の変化を考慮する。
- 大きく考える。
[1] 筋肉のテンションを最大限に維持する。
この1番目の事こそがパクルスキーのすべてのワークアウトの基本です。
『筋肉を大きくするために理解しておくべき、最も重要な点』を彼はこう言っています。”筋肉を大きくするのはウエイトでもトレーニングの強度でも、量でもない。それらはすべて手段にすぎない。それらをどう使うかが、筋肉を大きくするためのカギとなる。
筋肉を大きくするもの、より正確にいえば、回復したときに筋肉をより大きく成長させていく刺激を与えるのは、筋肉のテンション(緊張)を高めることなのだ。
筋組織を増やしていくためには、筋肉により大きなテンションを定期的に与え、長期的により大きくしていく必要性がある事を筋肉に認識させねばならない。”
上記の事のためにパクルスキーは正しいフォームで行う事が非常に重要になっています。カギを握るのは、『TUT (Time Under Tention/筋の緊張時間)』と言われるものです。
これは筋肉に負荷が与えられている時間、つまり筋肉が緊張している時間の長さなのです。
パクルスキーはセットを40秒継続する様にアドバイスしています。そして筋の緊張時間を高めるために1セットを8レップで行い、ウエイトを下ろす段階はゆっくりと、上げる段階は爆発的に行い、1レップに5秒かけるやり方です。
そしてこうも言っています。
”60秒まで延ばすのも、非常に効果が高い。これは60秒を超えてもまだ楽にセットを継続できるのに、指定した時間に達したからやめるのではない。
その場合は限界に達する迄セットを行い、次のセットでウエイトを増やす様にします。”
そして、この筋の緊張時間を延ばすということは、たとえばスクワットで1レップしかできないような重いウエイトを使って、1レップ終えるごとに休んで10レップのセットを行う事でもありません。
筋肉を働かせ続け、限界に達してセットを完了するまでTUTを延ばす事なのです。これはやってみるとかなり強度の高い練習です。言ってみれば精神力との戦いの様なものです。
[2] オーバートレーニングを過大視しない。
パクルスキーは言います。”オーバートレーニングになる確率は宝くじに当たるのと同じくらいだと新たな研究で示されている。
オーバートレーニングの症状は全身に現れ、筋肉だけに影響が及ぶものではない。神経系や内分泌系、筋組織に慢性的な影響が現れることになる。
適切な休養を取り、体を回復させる時間を十分にとっているのであれば、オーバートレーニングを心配する必要はない。”
オーバートレーニングになるのは、トレーニングが原因ではない。トレーニング以外に問題があってなるものなのです。
つまり、栄養を十分に摂り、体をしっかりと回復させていないからオーバートレーニングになるのです。トレーニング強度でなるのではないと彼は言います。
[3] ワークアウト時間を短くして1日をダブルで鍛える
パクルスキーのプログラムすべてがそうであるように、各ボディパートに行う日々のワークアウトを倍にするという方針も、科学的に裏付けられています。
最近のエビデンスで筋肥大は総負荷量で決まると言うことなんです。それも1週間単位の。中々、真似はしにくいのですが、後日検証してみます。
ワークアウト時間を50分以内に押さえる事によって、成長ホルモンレベルををコントロールしたいと考えている。
彼が日々のワークアウトで重点としていることは、高重量を使ってコンセントリック動作(ウエイトを上げる局面)を爆発的に行い、速筋線維をしっかりと刺激する事です。
当然ながら、セット間の休息時間は長めになり(2〜4分)、50分のワークアウトでセット数を多くこなせません。そこで、パクルスキーはこのワークアウトの4〜5時間後に(この間に食事2回と昼寝をする)再びジムに戻り、同じボディパートの2回めのワークアウトを行います。
この2回目のワークアウトではアイソレーションエクスサイズを増やし、軽めのウエイトを使い、セット間の休息時間を短くし、(40〜60秒)筋肉を疲労に追い込むことに重点を置きます。
スーパーセットやドロップセットといった高強度テクニックを活用します。
そして弱点部位に『オーバーリーチング』(事項参照)の状態を引き起こすために、同じボディパートのトレーニングを1日2回、5週間にわたって1日おきに行います。(そのボディパートを週に合計6回鍛える事になります。)
隔日に3日鍛えた後はトレーニングを3日休み、筋肉の回復を促せて成長を引き出します。
これは弱点部位を持っている多くのトレーニーは聞けば驚くと思います。回復するのだろうか?と。
[4] 『オーバーリーチング』を活用する。
パクルスキーはオーバートレーニングを心配していません。ですから、この過度のトレーニングを行うことで短期間、オーバートレーニングの状態になることは承知の上ということです。
通常2〜3日で回復する程度なので、より高い効果を引き出すために意図的に使われる『オーバーリーチング』を積極的に利用している。
また、パクルスキーはこうも述べています。”体を大きく成長させたいのであれば、体が慣れている以上の刺激を与える必要がある。弱点のボディパートを強化するトレーニング方法は少なくとも30種類はあるが、すぐに成長を引き出す効果という点では、オーバーリーチングに勝る方法は無い。
オーバーリーチングのポイントは、体に大きなストレスをかける事によって、その負荷に適応して成長しなければならないと体に理解させることだ。”
つまり、一般的な常識を超えた考え方が必要になるという事です。年中、同じセット数とレップ数で同じエクスサイズを繰り返していれば、筋肉は与えられた刺激になれてしまい、成長を引き出す刺激を与えられなくなります。弱点部位となればなおさらです。
究極のショック療法ですね。筋肉にはエクスサイズ方法を変えたり、レップ数やセット数を変える事によって新鮮な刺激を与えられます。ウイダー原則の筋幻惑法と言うことですね。
[5] 速筋線維と遅筋線維のためにテンポを変える。
”速筋線維、遅筋線維の両方を働かせるために、ウエイトを動かす速度に変化をつけろ”とパクルスキーは言っています。
カギはウエイトを上げる段階は速いペース(または中程度のペース)で行い、下ろす段階はゆっくりとしたペースで行う方法を指します。
ゆっくりしたペースでエキセントリック収縮を行うと、筋肉が緊張している時間は増すが、筋収縮のスピードは低下します。この方法を続けていくと筋力は弱くなっていきます。
それに対して、コンセントリック収縮を速いペースで行うと、筋力をグーッと押し上げます。したがって、ウエイトを下ろす段階はゆっくりと、そして上げる段階は速いペースで行うということです。
そして、こうした点を理解した上で、ボトムポジションで静止したり、しなかったり、また、トップポジションで静止したり、静止しなかったりというように、さらにテンポに変化をつける事ができます。
パクルスキーは言っています。”レップのテンポを3〜6週間おきに変えるようにしてみよう!”
常に筋肉は刺激を変化させる事なんですね!
重量だけ重くしていく必要はないのです。ワークアウトに変化をもたらせて新鮮な刺激を筋肉に与え続ける。とは言うものの言うは易しです。
高重量のトレーニング(トレーニーの筋力による)よりネガティブ重視の高レップは経験の無い人には解りませんが拷問のようです。筋肥大のために経験してみましょう!
[6] ユニークなエクスサイズも利用する。
以下の4つのエクスサイズは、一般的にはほとんど行われていませんが、パクルスキーが脚のワークアウトの日に取り入れています。
- ワンレッグ・プレス
- リバース・ハイパーエクステンション
- セイフティバー・スクワット
- シッシースクワット
ワンレッグ・プレスは脚を片側ずつ鍛えることによって、左右それぞれにより重点的にトレーニングが出来ます。
次のリバース・ハイパーエクステンションはバックエクステンションでは脚を固定して上体だけを動かすのですが、これはその逆です。
うつ伏せで上体をベンチに固定し、脚を真っすぐに伸ばして下ろしたポジションから、少なくとも上体と同じ高さ迄持ち上げます。臀筋とハムストリングスがターゲットです。
ボディビル界でも新人ながら最高の脚を持っている1人とも言われるパクルスキーは、フリーウエイトのスクワットの様々なバリエーションを取り入れています。
バックスクワットだけでなくフロントスクワット、ダンベルスクワットやセイフティバーを使う事もあります。それと、最近、見かけなくなったシッシースクワットも行っています。
このように彼は対象筋に対して色々なアプローチを取っています。僕が見ているYouTubeのトレーニング動画はチェーンやラバーバンドも使っています。筋緊張時間を延長させるためです。
さあ、次も大事だと僕が思う事です。 異なるトレーニング形式を一定期間ずつ、サイクル化して用いる事は、「ピリオダイゼーション」と呼ばれます。 パクルスキーはこの方法を取る事が、継続的に成長を引き出す効果をあげると確信しています。 彼曰く、”筋肉づくりでは、体を大きくしていくためには、トレーニング方法を変えて、筋肉に常にショックを与えられるようにしなければならない。” この点は私も全く同意見です。 そこでパルルスキーがアドバイスするのは、”各エクスサイズで使うウエイト(1RMに対する割合)トレーニング量、休息時間といったトレーニング要素に変化をつけ、オンとオフの期間にサイクル化する事だ。” 詳しくは[7] トレーニングをサイクル化する。
英語に自信がある方は是非ご覧になって下さい。
YouTubeも参考になります。ただし驚いた事に彼はかなりの早口です。驚きますよ!
[8] ウエストまわりを細く保つために。
ウエスト、あるいは腰回りを太くしたく無いからスタンディングエクスサイズ(特にデッドリフト)を高重量で行うのを避けているという人がいるが、パクルスキーはこの誤解を正す必要があると考えています。
トレーニングによって、骨格を変える事は出来ない。骨格は生まれつき決まっているものだ。
パクルスキーは腰幅が比較的広めの体形をしていますが、フリーウエイトのスタンディングエクスサイズを行わないようにしても、彼の腰幅に影響は無いし、逆にデッドリフトを高重量で行っても変わりない(ただし、彼は肩幅が凄まじく広いので、腰幅の広さが目立ちにくい)。
ウエストを太くする要因については、パクルスキーは”食べ過ぎ、消化不良、特定の食べ物に対する過敏反応による炎症、肝臓の炎症だ。”
まさしくその通りなんでしょう!
次の項は彼のトレーニング理論の代表的なアプローチのやり方でここ1ヶ月、毎晩、就寝前にYouTubeを見ていました。その考えとは!
[9] 重力による負荷の変化を考慮する。
エクスサイズの中には、ほとんどの場合、正しい動作範囲で行われていないものがあると、パクルスキーは言います。
つまり、フリーウエイトのエクスサイズの場合、重力によって常に下方向に負荷がかかるが、この事が意識されてないからだと言います。
さらにはこれに、最初の項で取り上げた「テンション」の問題が加わります。ウエイトを重力に抗して上下に動かすのではなく、床に対してより平行に近い面で動かす場合には筋肉のテンションが失われてしまいます。
この事を常に考慮する必要があるのです。ウエイトの負荷は常に下(重力)方向にかかるので、平行な面での動作は筋肉のテンションが失われてしまいます。
例えば、ダンベルフライでは、パクルスキーはウエイトを下ろすときには肘を曲げて筋肉を最大限にストレッチし、上げる段階では肘を伸ばして両腕を近づけるようにアドバイスをしています。
ダンベルは、肩より内側には入れません。肩より内側に上げてしまうと、胸筋のテンションが弱まるとともに、重力による負荷も減少してしまうと言っています。
つまり、パクルスキーのフライは『フライプレス』とも言うべきやり方です。
しかし、ダンベルではこうした方法をとるのですが、マシンやケーブルを使う場合は、通常のフライに近い動作を行う事が出来ると言います。
この場合にはウエイトスタックが常に重力方向に動くので、動作全体を通して筋肉のテンションを維持できるのです。
同様に、フリーウエイトで行うプリーチャーカールでは、上半分の動作では重力による負荷が弱まる。上半分の動作では、肩のほうに引く要素の方が大きくなるからです。
しかし、ケーブル・プリーチャーカールの場合は、筋肉の伸展から収縮動作迄、ウエイトスタックを重力に対抗して引いています。
このようにパクルスキーは重力とテンションという、普段あまり考えもしない考えを持っています。
皆さんも筋肥大を目指して重力に逆らい、テンションを維持できるエクスサイズをバーベル、ダンベル、ケーブルから探して下さい。
[10] 大きく考える
パクルスキーはオフシーズンには300ポンド(136.1kg)以上にもなります。
しかし、物事を常に科学的に考える彼は筋肉をつくるカギは、「自分の頭のなかのイメージにある」という事を理解しています。
そして、言います。”大きなことを成し遂げたいのであれば、自分の成長には終わりがないと考える事が重要だ。そのイメージを持ってこそ、限界まで成長し続ける事が出来るのだ。
もし人並みのレベルを目標としているのであれば、現状以上の成果を望む事はできない。しかし、大きな夢を抱いているのであれば、ぬるま湯状態から抜け出し、より大きな目標を立てる事がスタート地点となる。
今までの自分なら踏み出せなかったことをやってみよう。人は結局、自分がそうなりたいと思うものにしかなれないのだ。”
なんと立派な言葉なんでしょうか!33歳にしては凄すぎます。ここでベン・パクルスキーさんについて解っている範囲で解説します。
ベン・パクルスキー BEN PAKLUSKIについて
本名はBenjamin Pakulskiと言います。ベンは愛称なんです。あだ名はパックマンです。
余談ですがジェイ・カトラーも本名はジェイソン・カトラーなんですよ!
生まれは1981年3月18日生まれ、カナダのトロントの出身です。名前からしてポーランドの方ですね。現在はアメリカのフロリダ州のタンパ在住です。
身長178cm 体重116kg(オン)140kg(オフ)
奥さんと子供さん2人の良きパパ
プロデビューは2009年のタンパプロで3位 ボディビルデビューは2005年に24歳の時、その後、2008年にカナダ・チャンピオンシップスのオーバーオールで優勝。
プロに転向。プロビルダーとしては順調なスタートでしたが、2010年ニューヨークプロ7位、2011年のアーノルドクラッシックでは10位と伸び悩みます。
やはり、原因は大きな脚に比べて上体のサイズが小さくバランスが悪かったと評されています。
そこで、聡明なベンはオフを取り1年間トレーニングに励み、2012年のフレックスプロで2位となり、注目を浴びます。
ここで外せないのはチャンピオン仕掛人のコーチ、チャド・ニコルズに師事したのです。そして、チャドから学んだ事や独自の科学的見識からさらなる飛躍を遂げバルクアップしています。
2013年はアーノルドクラッシックで元みすたーオリンピアのデキスター・ジャクソンに破れたとはいえ、堂々の2位です。今後、ミスターオリンピアでの活躍を期待したいところです。
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